会社で働くとき、誰が自分の上司かって普通は決まってるよね。でも、大きなプロジェクトが動くときって、同時に複数の人から指示をもらうことがあるんだ。そういう「ちょっと変わった組織の作り方」が「マトリックス組織」。この記事を読めば、なぜ企業はそんなことをするのか、そしてそれがどんなメリット・デメリットを生むのかがわかるよ。
- マトリックス組織は 複数の上司から指示を受ける 珍しい組織形態です
- 異なる専門分野を組み合わせる プロジェクトで活躍する仕組みです
- 判断が良くなる反面、指示の調整が難しい という課題があります
もうちょっと詳しく
マトリックス組織を理解するためには、まず通常の組織構造を知ることが大切です。普通の会社は「営業部」「企画部」「生産部」みたいに機能ごとに分かれています。これを「機能別組織」と言います。つまり、同じ仕事をしてる人たちが一つの部門にまとまってるんです。ところが、新しい商品を開発したり、特別なプロジェクトを進めたりするときは、営業も企画も生産も、みんなで一緒に動かないといけないんです。そこで登場するのが「プロジェクト組織」。ただ、プロジェクトが何個も走ってると、誰がどこに所属するのかが曖昧になっちゃう。そこで両方の良いとこ取りをしたのが「マトリックス組織」。タテに部門があり、ヨコにプロジェクトがあって、その交点で働く人たちがいるんです。
マトリックス組織は「タテとヨコの2つの系統を同時に持つ」ってことがポイント。学校で例えると、学年担任(タテ)と部活動の顧問(ヨコ)みたいな感じ。
⚠️ よくある勘違い
→ 実は両方の指示を聞かないといけません。どちらかを無視すると、組織全体の判断が狂ってしまいます。
→ 正解です。だからコミュニケーション能力がとても大切になるんですよ。
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マトリックス組織の基本を理解しよう
通常の組織とマトリックス組織の違い
まず、会社の組織がどういう風に作られてるかを知ることが大事です。ほとんどの会社は「営業部」「企画部」「経理部」みたいに、仕事の種類によって部門に分かれています。この形を「機能別組織」と言います。つまり、同じ種類の仕事をしてる人たちが集まってるってわけです。営業部には営業員ばっかり、企画部には企画者ばっかり。こういう形だと何が良いかというと、専門知識が深まるし、同じ仕事をしてる人たちが情報共有しやすいんです。あなたも学校で、同じ学年の人たちと一緒に授業を受けるでしょ。そうすると、その学年の子たちと仲良くなったり、同じレベルで勉強を進めたりできますよね。それと同じです。
でも、世の中の問題って複雑になってきました。新しい商品を作ろう、新しいサービスを始めよう、と思ったときに、営業部だけの知識じゃダメなんです。企画の専門知識も必要だし、生産部の視点も必要だし、場合によっては経理部の知識だって要ります。そういうときに登場するのが「プロジェクト組織」です。プロジェクト組織は、異なる部門から人を集めて、一つのプロジェクトのためだけのチームを作るんです。例えば、スマートフォンの新機種を開発するプロジェクトがあったとしたら、営業から5人、企画から3人、生産から4人、経理から1人、みたいに集めてくるんです。そのプロジェクトが終わったら、また元の部門に戻る。
ところが、いろんなプロジェクトが同時に走ってると、どうなると思いますか?営業部の田中さんが、Aプロジェクトにも参加して、Bプロジェクトにも参加して、さらにC新商品企画にも参加してる、なんてことになっちゃうんです。そうなると、田中さんは誰の指示を聞けばいいのか分かんなくなっちゃいますよね。そこで出てきたのが「マトリックス組織」。この組織では、田中さんは「営業部長」という上司もいるし、「Aプロジェクトのマネージャー」という別の上司もいるんです。つまり、複数の指示系統を持つようになるんです。
「行」と「列」で構成される特殊な仕組み
マトリックス組織の名前の由来は、数学とか理科で習う「マトリックス」(行列)という考え方からきています。マトリックスって、タテと横に数字が並んでる表のことだよね。会社のマトリックス組織も、それと似てるんです。
タテ軸には「部門」が並びます。営業部、企画部、生産部、経理部、という感じです。これらの部門は、それぞれが「機能別組織」の役割を果たします。つまり、営業部長は営業部員たちを管理するし、企画部長は企画者たちを管理するんです。この構造は通常の会社と同じです。
そしてヨコ軸には「プロジェクト」が並びます。商品Aの開発プロジェクト、商品Bの開発プロジェクト、新サービスの立ち上げプロジェクト、という感じです。それぞれのプロジェクトには、マネージャーがついてます。このマネージャーも、複数の部門から集まった人たちを管理します。
そして、この「タテの部門」と「ヨコのプロジェクト」が交差するところに「人間」がいるんです。その人は、同時に2つの上司を持つことになります。一つは「部門長」、もう一つは「プロジェクトマネージャー」です。例えば、営業部の山田さんがAプロジェクトに参加してたら、山田さんは営業部長にも報告するし、Aプロジェクトマネージャーにも報告するんです。ちょっと複雑に見えますよね。でも、この複雑さが、実は企業に大きなメリットをもたらすんです。
マトリックス組織を使う理由
複数の視点と知識を組み合わせられる
マトリックス組織の最大のメリットは、「複数の専門知識を一つのプロジェクトに集中させることができる」ってことです。想像してみてください。新しいスマートウォッチを開発するプロジェクトが立ち上がりました。このスマートウォッチって、ただ作ればいいわけじゃなくて、いろんな角度から考える必要があるんです。
営業部の人は「どういう機能があったら売れるのか」を考えます。「このご時世、健康管理機能が大事だから、心拍数やストレス度合いを測る機能を入れよう」みたいなことを言うわけです。
企画部の人は「全体的なビジネス戦略として、どういう方針で進めるのか」を考えます。「スマートウォッチ市場ってすごく競争が激しいから、ほかにはない特別な機能を作ろう」みたいなことですね。
生産部の人は「実際に作れるのか、コストはいくらかかるのか」を考えます。「心拍数を測る機能は、こういうセンサーが必要で、これくらいコストがかかって、この技術で実装できる」という情報をくれるんです。
経理部の人は「予算は足りるのか、利益率はどのくらいか」を考えます。「このコストで作って、この価格で売ったら、いくら儲かるのか」を計算するわけです。
このように、複数の部門の視点が集まると、もっと良い判断ができるんです。営業だけだと「売れそうな機能ばっかり入れちゃえ」ってなって、実際には生産できないようなものになっちゃったりします。生産だけだと「安く作ることだけ考えて、つまらない商品になっちゃった」みたいなことになります。でも、複数の視点が入ると、「売れる機能」と「実装可能性」と「利益」のバランスを取った、いい商品が生まれるんです。
速い判断と柔軟な対応ができる
マトリックス組織のもう一つのメリットは、「速く動ける」ってことです。プロジェクトが進む中で、「あ、この方針は市場に合わない」「生産技術が追いつかない」みたいなことが分かることって、よくありますよね。そういうときに、マトリックス組織だと、すぐに判断して方向転換ができるんです。
なぜかというと、決定に必要な人がみんなプロジェクトに参加してるからです。営業の視点、企画の視点、生産の視点が全部そこにあるから、「営業は OK だけど、生産は無理」みたいなことが、すぐに分かるんです。通常の組織だったら、営業部が決めて、それから企画部に相談して、企画部から生産部に相談して…って、上から下へ、部門から部門へ、情報が流れるんです。その過程で時間がかかっちゃいますよね。でも、マトリックス組織なら、みんなが一緒に考えてるから、判断が速いんです。
それにね、複数の視点があると、「あ、こういう見方もあったのか」っていう発見も多いんです。営業部と生産部の人が一緒に考えてると、営業部の人が「ユーザーってこんなニーズがあるんです」って言ったときに、生産部の人が「あ、そしたらこういう技術的なアプローチもあり得ますね」みたいに、新しいアイデアが生まれたりするんです。これを「シナジー」なんて言ったりしますが、つまり「複数の力が組み合わさると、個別の力の合計以上の効果が生まれる」ってわけです。
マトリックス組織の課題と難しさ
複数の上司から指示をもらう大変さ
いいことばっかり言ってきたけど、マトリックス組織には大きな課題もあるんです。それが「複数の上司を持つ」ってことの大変さなんです。
想像してみてください。あなたが営業部の社員だとします。通常だと、営業部長という上司が1人いて、その人から指示をもらいますよね。でもマトリックス組織だと、営業部長からも指示をもらうし、プロジェクトマネージャーからも指示をもらうんです。」
営業部長は言います。「今月は営業成績を上げることが重要だから、そっちに力を入れてほしい。Aプロジェクトは後回しで。」
一方、Aプロジェクトマネージャーは言います。「プロジェクトの締切が来月に迫ってるから、営業資料作成を最優先にしてほしい。営業成績は後でいい。」
あなたなら、どうしますか?両方の指示を100%聞くことって、不可能ですよね。時間は限られてるから、どちらかに優先順位をつけないといけません。でも、どちらも大事な上司だから、どちらも無視することはできません。こういう「矛盾した指示」が増えると、ストレスがたまるし、判断が難しくなっちゃうんです。
意思決定が複雑になる
マトリックス組織では、意思決定(つまり「こうしよう」と決めること)が複雑になります。通常の組織なら、営業部長が「この方針で行く」と決めたら、営業部員はみんなその方針に従います。シンプルですよね。
でもマトリックス組織だと、営業部長が「この方針で行く」と言ったのに、プロジェクトマネージャーが「いや、その方針だとプロジェクトの目標が達成できないから、こっちの方針にしよう」って言い出すことがあるんです。そしたら、その間での調整が必要になります。「営業の目標とプロジェクトの目標の両方を満たすには、こうしたらどう?」みたいに、話し合いを重ねて、納得できる案を探すんです。
この「調整」って、すごく時間がかかるんです。そしてね、人間関係も複雑になっちゃう。営業部長とプロジェクトマネージャーが意見が対立してると、その下の社員はどっちの味方をしたらいいのか分かんなくなっちゃったりします。給料をもらってる部門の上司に従うのか、それとも、プロジェクトの結果を見てくれる上司に従うのか、どっちを重視したらいいのか。そういうジレンマが生まれるんです。
責任が曖昧になることがある
マトリックス組織のもう一つの課題が「責任が誰にあるのか、分かりにくくなる」ってことです。
通常の組織なら、何か失敗があったときに「営業部長の責任だ」ってはっきりしてますよね。営業部長が部下をちゃんと管理してなかったのか、判断を誤ったのか、そういうことが評価される対象になります。
でもマトリックス組織だと、どうなると思いますか?プロジェクトが失敗したときに、営業部長とプロジェクトマネージャーのどちらが責任を取るのか、曖昧になっちゃうんです。営業部長は「いや、プロジェクトマネージャーの判断が悪かった」と言い張るし、プロジェクトマネージャーは「営業部のリソース(つまり人員)が足りなかったんだ」と言い張ったり。誰も責任を取らずに、責任のなすりつけ合いになっちゃったりするんです。こういう状況って、組織全体のモチベーションを下げちゃいます。
マトリックス組織が活躍する場面
大きなプロジェクトや新しい取り組み
では、どういう会社や部署でマトリックス組織が使われてるのか、見ていきましょう。
一つめは「大型の開発プロジェクト」です。自動車メーカーが新しい車を開発するとき、これはすごく大きなプロジェクトになります。エンジン設計部門、デザイン部門、電子制御部門、製造部門、販売部門、法務部門(法律的な問題がないか確認する部門)…こんなにいろんな部門が関わります。こういう場合、マトリックス組織を使わないと、各部門がバラバラに動いちゃって、全体の統合がうまくいかないんです。
二つめは「新しいビジネスラインの立ち上げ」です。例えば、昔は「洋服を売る会社」だった企業が、「EC(インターネット販売)事業を始めよう」となったとします。この場合、従来の営業部も必要だし、IT技術部も必要だし、企画部も必要だし、経理も必要です。EC事業という新しいビジネスの責任者を置いて、各部門から人を集めて、チームを作る。これがマトリックス組織のやり方です。
三つめは「複雑な製品やサービス」を扱う会社です。例えば、製薬会社が新しい薬を開発するとき、研究部門、製造部門、品質管理部門(安全性を確認する部門)、販売部門、医療情報部門(医者に情報提供する部門)…みんなが関わります。こういう業界では、マトリックス組織はとても有効です。
スピードと質の両方が求められる業界
マトリックス組織が活躍する業界の特徴として、「スピードと質の両方が重要」ってことがあります。
テック企業(IT企業)なんかが良い例です。例えば、スマートフォンのアプリを作ってる会社があったとしましょう。エンジニア部門がアプリを作って、デザイン部門がユーザーインターフェース(つまり、見た目や使いやすさ)を設計して、マーケティング部門がユーザーの需要を調査して、営業部門が売ります。このアプリが成功するには、これらすべてが完璧に連携する必要があるんです。アプリの性能がいくら高くても、見た目がダサかったら売れませんよね。見た目が良くても、実際に売るための営業戦略がなかったら、ユーザーに届きません。だから、マトリックス組織で、みんなが同じ目標に向かって動くんです。
もう一つ、「市場変化が速い」業界もマトリックス組織に向いてます。ファッション業界なんかそうですね。トレンドって、すごく速く変わります。だから、意思決定も速くしないといけません。企画部が「こういうデザインが流行りそう」と判断したときに、すぐに生産部が「これなら作れる」と応えて、すぐに販売部が「この価格で売れる」と確認する。こういう速い判断が必要なんです。
マトリックス組織を成功させるコツ
クリアな目標と役割分担
マトリックス組織を成功させるためには、何より大切なのが「目標をはっきりさせる」ことです。
Aプロジェクトには「Aプロジェクト」としての目標がある。「この商品を来年3月までに発売する」「売上目標は月10億円」みたいな、明確な目標ですね。そしてね、その目標を達成するために、営業部は何をするのか、企画部は何をするのか、生産部は何をするのか、それぞれが明確に分かってないといけません。
もしね、営業部の人が「あ、俺たちの仕事って何なの?」「営業成績を上げることが目標なのか、プロジェクトの目標を達成することが目標なのか」って、迷ってたら、どうなると思いますか?その人は、いつも判断に迷うことになっちゃいます。だから、「営業部として、このプロジェクトで期待されてることは、これとこれです」って、はっきり伝える必要があるんです。
それでね、複数の上司の指示が矛盾したときの「優先順位」も、あらかじめ決めておくといいんです。「プロジェクトが来月締切だったら、プロジェクトを優先する。営業成績は2番目」みたいにね。そうすると、判断が楽になります。
コミュニケーションとスピード
マトリックス組織では、コミュニケーションがすごく重要です。複数の上司を持つから、意思決定が複雑になるって言ったけど、それを解決するには「早めに相談する」「頻繁にコミュニケーションを取る」しかないんです。
例えば、営業部長とプロジェクトマネージャーが意見が対立してるなら、早めに二人を交えて話し合いの場を作るんです。後になってから「えっ、そんな指示が出てたの?」って、知ることになると、すごい大変です。でもね、早めに話し合いをしてたら、「営業と企画の意見は対立してるけど、こういう折り合いがつく案がありますね」って、柔軟に対応できるんです。
それにね、マトリックス組織では「報告・連絡・相談」のスピードが勝負になったりします。「Aプロジェクトの進捗はどう?」「営業部の目標達成はどう?」って、頻繁に確認する。そして、問題が見つかったら、すぐに対応する。こういうスピード感を持つ組織ほど、マトリックス組織のメリットを活かせるんです。
強いリーダーシップ
マトリックス組織を成功させるもう一つ大切なことが「強いリーダーシップ」です。プロジェクトマネージャーなり、責任者なり、「この人が最終的な決定者」っていう存在を、はっきりさせる必要があります。
理由はね、さっき言った通り「意思決定が複雑になる」から。営業部長とプロジェクトマネージャーが意見が対立したときに、誰かが「最終的には、こう決める」って、判断しないと、組織が動かなくなっちゃいます。だから、プロジェクトマネージャーに「最終決定権を持つ」ような権限を与えるんです。もちろん、営業部長の意見も聞く。でも、「でも、プロジェクトの責任はプロジェクトマネージャーが持つから、最終的にはプロジェクトマネージャーが決める」ってことをね。
そして、こういう「強いリーダー」を支えるための「信頼」も大事です。営業部長が「このプロジェクトマネージャーなら、正しい判断をしてくれる」って信頼してないと、いつまでも対立が続いちゃいます。だから、組織の中に「この人なら信頼できる」という人を育てることが、すごく大事なんです。
