YouTubeを開いて再生ボタンを押したのに、すぐに始まらなくて数秒待つことってありますよね。オンラインゲームで「あ、敵が急に動いた」と思ったら実は自分の方が遅れていた、みたいなことも。こういう「指示を出してから実際に動くまでの時間差」のことを「レイテンシー」と言うんです。この記事を読めば、スマホやパソコンが遅く感じるのはなぜか、そしてそれをどう減らすか、その仕組みが全部わかるようになりますよ。
- レイテンシーとは、「指示を送ってから相手に届いて、返事が戻ってくるまでの時間」のこと、つまり遅延のことだ
- ゲームやネットの遅さを感じるのは、100ミリ秒以上のレイテンシーがあるせいで、これは通信・処理・待機の3つの時間が合わさっている
- レイテンシーを減らすには、サーバーに近づいたり、ネット回線を良くしたり、処理を軽くしたりすることが大事だ
もうちょっと詳しく
レイテンシーは、インターネットやネットワークの世界で一番大事な言葉の1つです。なぜなら、私たちがスマホやパソコンを使うときの「速い」「遅い」という感覚は、ほぼ全部このレイテンシーで決まってしまうからです。YouTubeの動画がすぐ再生されるのはレイテンシーが小さいから、Twitterで画像を開くのに時間がかかるのはレイテンシーが大きいから。つまり、レイテンシーを理解すれば、デジタル機器が遅く感じるのはなぜか、という疑問の大半が解けるんですよ。
レイテンシーは「遅延」って意味。短いほどサクサク、長いほどもたもた。
⚠️ よくある勘違い
→ いや、違うんです。「速度」は1秒間にどのくらいのデータが流れるか(インターネット回線なら「Mbps」とか)。「レイテンシー」は送ってから届くまでの時間(「ミリ秒」)。どっちが大きいからいいってわけじゃなくて、両方大事なんです。
→ これが正解。たとえば、YouTubeの動画をダウンロードするなら速度が大事(大きなファイルをスムーズに)。でもゲームをするなら遅延が大事(コマンドがすぐ反応する)。どちらが重要かは用途で変わります。
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レイテンシーって何?ゲームがラグるのはなぜ
「遅れ」という言葉がぴったり
レイテンシーという言葉を聞くと、難しく感じるかもしれません。でも実は、これは「遅れ」とか「遅延」という意味の英語なんです。つまり、ネットの世界における「時間差」のことですね。
具体的に説明しましょう。あなたがスマホでゲームをやってるとします。敵キャラが近づいてきたから、画面をタップしてジャンプしようとした。そのタップの信号がゲームのサーバーに届いて、「あ、このプレイヤーはジャンプボタンを押した」と認識されて、その情報がまたあなたのスマホに返ってくる。この全部にかかる時間が「レイテンシー」です。この時間が短いほど、ゲームはスムーズに動く。逆に長いと「あ、キャラが動くのが遅れてる」って感じるわけです。
思い出してみてください。友だちとLINE通話するときに、相手が「え?」と聞き返してくる。すると自分もジタバタして「あ、聞こえないのか、えーと…」みたいに、会話がぎこちなくなったことはありませんか?それと一緒です。相手に声が届くのに時間がかかってるから、タイミングがズレてしまう。それがレイテンシーです。
「ミリ秒」という超短い単位で数える
では、レイテンシーはどのくらいの時間があればプレイヤーに気づかれるのでしょうか。答えは「意外と短い」です。一般的には、100ミリ秒を超えるとゲーマーが遅さを感じ始めるといわれています。100ミリ秒というのは、つまり1秒の100分の1ということですね。そんな短い時間でも、私たちの反応能力が優れているから気づいてしまうんです。
オンラインゲームのプロプレイヤーたちは、もっともっと敏感です。30ミリ秒くらいの差でも実力に影響するといわれています。だから、プロは「ゲーミングチェア」「高速インターネット回線」「専用のゲーミングマウス」など、レイテンシーを少しでも減らせる環境を整えるんですよ。
実は、この「ミリ秒」というのはコンピュータの世界ではけっこう長い時間なんです。なぜなら、コンピュータのプロセッサーは1秒間に数十億回の計算をするからです。「0.1秒」という時間の中に、膨大な量の計算が詰め込まれているんですね。だから、ほんの少しのレイテンシーの差でも、ゲームの快適さや仕事の効率が大きく変わってしまうわけです。
実生活の例えで理解する
レイテンシーを理解するのに、実生活の例え話が役に立ちます。たとえば、あなたが友だちに手紙を出すとしましょう。その手紙が友だちのもとに届くまでに3日かかったとします。友だちが返事を書いて、またあなたのもとに返ってくるまでに3日かかります。つまり、質問から返事を受け取るまでに6日かかってしまう。これが「レイテンシーが大きい」状態です。
でも、もしあなたが友だちと直接会って話したら?その場で質問して、その場で返事がもらえます。往復で0秒。これが「レイテンシーが小さい」状態ですね。
インターネットも、この手紙のやり取りと宅配便のやり取りの中間くらいに考えるといいでしょう。光ファイバーを使えば物の数ミリ秒で届くけど、途中でいろいろな処理が挟まるから、結局は数十ミリ秒〜数百ミリ秒かかってしまう。その「数十ミリ秒」が、私たちが感じる「速さ」や「遅さ」を大きく左右しているんです。
レイテンシーが発生する3つの原因
1番目:通信時間(距離と光の速度)
まず1つ目は「通信時間」です。これは、データが物理的に移動するのにかかる時間のことですね。
インターネットのデータは、光ファイバーケーブルを通じて光の速度で移動します。光ってすごく速いから、時間はかかってないんじゃないかな〜って思うかもしれません。でも、光も物理的な物体です。光の速度は時速30万キロメートル。つまり1秒間に30万キロメートル移動する。それでも、地理的に遠い場所へのデータ送信には時間がかかるんです。
具体的な数字を出してみましょう。あなたが日本にいて、アメリカにあるサーバーにデータを送ったとします。日本からアメリカまでの距離はだいたい1万キロメートル。光の速度で行ったら、1万キロメートル ÷ 30万キロメートル/秒 = 0.033秒 = 33ミリ秒です。でも、実際には光ファイバーが直線では通ってないし、中継地点でいろいろされるので、実際には100ミリ秒くらいかかっちゃう。これが「地理的レイテンシー」という奴です。
だから、YouTubeとかGoogleのサーバーは、世界中にたくさん置かれています。あなたが使ってるYouTubeのサーバーは、たぶん日本国内にあるから、たった数ミリ秒で応答が返ってくる。でも、小さな企業のサーバーが海外にしかなかったら、どうしても100ミリ秒以上かかっちゃう。これが、大企業のアプリは快適で、小規模なアプリは重く感じるという理由の1つでもあります。
2番目:処理時間(データを読み込んで返すまで)
次は「処理時間」です。データが相手のコンピュータに届いても、すぐに返ってくるわけじゃないんです。受け取ったコンピュータが、そのデータを読み込んで、何かしらの処理をして、返事を作って送り返す。その全部に時間がかかるんですね。
たとえば、あなたがGoogleに「東京 天気」と検索したとします。そのリクエストがGoogleのサーバーに届きます。Googleのコンピュータは、その言葉を読み込んで、膨大なインターネット上のデータベースから「東京の天気に関する情報」を探し出して、あなたの検索結果として並び替えて、それをあなたのスマホに送ります。このプロセス全部が「処理時間」ですね。
処理時間は、サーバーの性能に大きく左右されます。高性能なコンピュータだったら1ミリ秒で終わることも、古いコンピュータだったら100ミリ秒かかるかもしれません。また、複雑な処理が必要だったら時間がかかります。簡単なデータのやり取り(「今何時?」という質問)なら数ミリ秒ですむけど、複雑な計算が必要だと(「このビデオをMP4形式に変換して」みたいな)数秒かかることもあります。
3番目:待機時間(列に並んで待つ)
3番目が「待機時間」です。これが一番わかりやすいと思います。
サーバーって、複数の人からの要求を同時に処理します。あなたがYouTubeの動画を再生するのと同じ瞬間に、世界中の何百万人も動画を再生してるんですよ。サーバーは「あ、AさんとBさんとCさんから同時に要求が来た。えーと、順番に処理しましょう」って処理するわけです。あなたがたまたま長い列の最後の方だったら、Aさん、Bさんの分を処理し終わるまで待たなければいけません。これが「待機時間」ですね。
わかりやすい例えは、お店のレジです。レジが1台で、スタッフが1人だったら、お客さんは列に並んで順番を待ちますよね。前の人の会計が終わるまで待つ。あなたがたまたま列の最後だったら、すごく時間がかかる。これと同じことがサーバーで起きているんです。
だから、サーバーの混雑時間(夜間とか、人気の配信中とか)はレイテンシーが増えます。逆に、早朝とか、みんなが使ってない時間帯は、待機時間がほぼゼロだから、レイテンシーが小さくなる。これが「夜間は遅くて、朝は速い」という経験の理由です。
どのくらいのレイテンシーが「速い」「遅い」か
用途によって変わる快適さの基準
レイテンシーの「いい値」「悪い値」は、何をしているかによって全く変わります。YouTubeを見るのに必要なレイテンシーと、オンラインゲームに必要なレイテンシーは全然違うんですね。
まず、YouTubeとかNetflixとか動画を見る場合。これは、実はレイテンシーがそこまで大事じゃないんです。なぜなら、動画は「バッファリング」といって、あらかじめたくさんのデータをダウンロードして、貯めておくからです。だから、レイテンシーが500ミリ秒あってもいいんです。むしろ大事なのは「通信速度」で、大きなファイルをいかに高速でダウンロードできるかなんですね。
次に、LINEとかメールのようなテキストメッセージの送受信。これでも、レイテンシーはそこまで大事じゃありません。だいたい200ミリ秒あってもいいでしょう。だから、LINEで返信が少し遅れても、気になりません。
でも、ビデオ通話はどうか。これはレイテンシーが大事になってきます。100ミリ秒を超えると、会話がぎこちなくなります。だから、通話品質を売りにするアプリとか、Zoomとか、ビジネス向けの通話アプリは、100ミリ秒以下のレイテンシーを目指しているんです。
最後に、ゲーム。特にFPS(シューティング)ゲームとか、リアルタイムアクションゲームは、レイテンシーが命です。プロゲーマーが目指すのは「50ミリ秒以下」。最近のゲーム機とか高速回線の人は、「10ミリ秒」くらいを目指してます。50ミリ秒を超えると、もう「ラグい」と感じちゃうんですよ。
動画:500ms OK / 通話:100ms必要 / ゲーム:50ms必要。用途で目安が違う。
実感できるレイテンシーの差
では、実際にはどのくらいの差があると「遅さ」を感じるのか。実験的な数字を並べてみましょう。
0〜20ミリ秒:人間は気づきません。最高に快適です。
20〜50ミリ秒:ほぼ気づきません。ゲームでも十分快適。
50〜100ミリ秒:少し遅く感じ始めます。ゲームだと「あ、ラグてる」って気づく人がいる。
100〜200ミリ秒:明らかに遅い。ビデオ通話は無理。ゲームは「すごくやりづらい」レベル。
200ミリ秒以上:YouTubeでも「あ、読み込んでる」って感じる。日常生活で不便。
こういう差が、実は数百ミリ秒という「人間にはわからないはずの短さ」の中に詰まってるんですね。これが、レイテンシーという考え方の面白いところです。
レイテンシーを減らすための工夫
1:サーバーを使う人の近くに置く
一番効果的な方法は、サーバーを使う人に近くに置くことです。「地理的レイテンシー」は減らせないけど、それを最小化できるんですね。
大企業が世界中にサーバーを置いてるのは、このためです。Amazonとか、Googleとか、Netflixとか、みんな「サーバーをできるだけユーザーの近くに置く」という戦略を取ってます。日本にいるあなたがYouTubeを見るとき、実は日本国内のサーバーから動画をもらってるんですよ。アメリカのサーバーから毎回もらってたら、遅くてたまりません。
これを「CDN」(コンテンツデリバリーネットワーク)と呼びます。つまり「世界中にコンテンツのコピーを置いて、一番近いサーバーからもらおうぜ」という仕組みですね。
2:インターネット回線を高速化する
2番目は、インターネット回線そのものを高速化することです。
あなたのスマホが使ってる回線が「4G」だったら、5Gに変えると少し速くなります。5Gは低レイテンシーを売りの1つにしてるからです。また、自分の家のWi-Fi回線が古い規格だったら、新しいWi-Fi 6とかWi-Fi 7に変えるのも手ですね。
でも、正直なところ、あなたが個人でできることって限られてます。だから、ゲームをするときは「有線LANケーブルで直接つなぐ」「Wi-Fiじゃなく有線」みたいな工夫をするわけです。
3:サーバーの処理を軽くする、または高性能化する
3番目は、サーバー側の工夫です。データベースの検索を高速化したり、余計な処理を削ったり、もっと高性能なコンピュータを使ったり。こういった工夫で、処理時間を削るんですね。
プログラマーが「このコード、遅い。最適化しよう」って言ってるのは、つまりレイテンシーを減らすために処理時間を短くしようとしてるわけです。
4:キャッシュを使う
4番目が「キャッシュ」という仕組みです。つまり「よく使うデータを、手元に保存しておく」という作戦ですね。
たとえば、あなたがYouTubeのホーム画面を見ます。ホーム画面に表示される動画の一覧とか、あなたのプロフィール情報とか、こういう情報はそこまで頻繁には変わりません。だから、一度もらったデータをスマホに保存しておいて、次にYouTubeを開いたときは「サーバーに聞く」の代わりに「スマホに保存してあるやつを使おう」ってするんですね。そうすれば、サーバーとの通信がいらなくなるから、レイテンシーが限りなく0に近くなります。
ブラウザが「キャッシュ」を保存するのも、これが理由です。何度も同じサイトを見るときは、キャッシュから読み込むから、2回目以降は早いんですよ。
これからのインターネット、5Gと衛星通信
5Gはレイテンシーを半減させた
ここ数年で、5Gという新しい通信規格が広がってきました。5Gの特徴は「速い」「安定してる」「レイテンシーが小さい」の3つです。特に、レイテンシーという観点では、5Gは4Gの半分以下です。
4Gでは100ミリ秒くらいだったのが、5Gだと10ミリ秒くらいになる。これだけで、ゲームはぐっと快適になります。実は、今のゲーム体験が快適なのは、一部の人が5Gを使い始めたからでもあるんですね。
さらに、6Gという次世代規格も研究されてます。6Gではもっともっとレイテンシーが小さくなるはずです。
衛星通信による新しい可能性
最近、衛星通信も注目されています。SpaceXの「Starlink」とか、他にもいくつかの企業が衛星でインターネットを提供する計画を進めてますね。
衛星は、地上のサーバーより高い位置にあるから、「通信距離が長くなる」つまり「レイテンシーが大きくなる」というデメリットがあります。でも、メリットは「地球上どこからでも通信できる」ということ。山奥とか、海上とか、今までインターネットが届かなかった場所でも、衛星からなら信号が来るんですね。
だから、衛星通信はレイテンシーの面では不利だけど、「接続性」という別の観点では革新的なんです。これからは「レイテンシーを犠牲にしてでも、どこでも繋がる」という選択肢も出てくるってわけです。
