「来月から営業部に異動してもらう」――社会人になった友だちからそんな話を聞いて、「え、嫌じゃないの?」って思ったことない? 自分が就職したあとに急に「別の部署に行って」「違う仕事してね」なんて言われたら、断れるのか、それとも断れないのか、なんだか不安だよね。そもそも会社ってそんなことができるの?って疑問もある。この記事を読めば、「配転ってなんなのか」「どんな場合はOKでどんな場合はアウトなのか」が全部わかるよ。
- 配転とは同じ会社の中で 担当業務・部署・勤務地を変えること で、転職とは全然違う話だよ
- 会社には 配転命令権 があるから基本的には従う必要があるけど、生活や健康への重大な影響がある場合は断れることもある
- 嫌がらせ目的や不当な動機の配転は 権利の濫用 として法律上無効になるから、会社も何でもやっていいわけじゃない
もうちょっと詳しく
配転には大きく分けて2種類あって、部署や担当業務が変わる「職種変更型」と、勤務する場所が変わる「転勤型(勤務地変更)」がある。日本の会社では入社するときに「営業職として採用」「東京勤務限定」みたいに仕事や場所を細かく決める契約じゃなくて、「正社員として採用」という広い範囲で雇う「メンバーシップ型雇用」が多いんだ。だからこそ会社は「業務上の必要があればどこにでも行ってもらえる」という考えがベースになっている。一方で最近は、転勤なしの「地域限定正社員」みたいな雇用形態も増えてきていて、その場合は契約で勤務地が決まっているから配転命令の範囲が狭くなるよ。自分がどんな契約で働いているかを知っておくことが大事なんだ。
入社時の雇用契約書に「勤務地限定」「職種限定」の文言があれば、それが配転命令の範囲を左右するよ!
⚠️ よくある勘違い
→ 配転命令を断ったからといって、すぐに解雇されるわけじゃない。不当な解雇は別途法律で守られているし、断る正当な理由があれば保護される場合もある
→ 命令に従わなかった場合に会社が取れる対応には限界があり、特に正当な理由がある断り方をした場合は労働者側が保護される
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配転ってそもそも何? 転勤・異動との違いを整理しよう
「配転」という言葉、社会人の話題ではよく出てくるけど、正確にはどういう意味なのか知っている人は意外と少ない。配転とは「配置転換」を縮めた言葉で、つまり同じ会社に勤め続けたまま、担当する業務の内容や部署、あるいは働く場所(勤務地)を変えることを指すよ。
よく似た言葉に「異動」と「転勤」があるけど、ざっくりこんなふうに整理できる。
- 異動:部署や担当が変わること全般(同じビルの中でも異動と言う)
- 転勤:勤務地(働く場所)が変わること(大阪→東京みたいな引っ越しをともなうケース)
- 配転:異動も転勤も含む、広い意味での「配置を変える」こと全体
つまり「転勤は配転の一種」「異動も配転の一種」と思えばわかりやすい。学校で言えば、「1年2組から1年3組に移る」のが異動的な配転で、「A中学からB中学に転校する(でも同じ市立)」のが転勤的な配転のイメージだよ。
職種変更も配転のひとつ
場所だけじゃなくて、仕事の種類が変わるのも配転に含まれる。たとえば「ずっとシステムエンジニアとして働いていたのに、来月から営業に回ってほしい」というのも立派な配転だよ。こういうのを「職種変更」とか「職務変更」って呼ぶ。この場合、引っ越しはなくても仕事の内容がガラッと変わるわけだから、本人にとってはかなり大きな変化になるよね。
出向・転籍との違いも覚えておこう
混乱しやすいのが「出向」と「転籍」。
- 出向:元の会社に籍を置いたまま、別の会社(グループ会社や取引先)に行って働くこと
- 転籍:元の会社との雇用関係を完全に終了して、別の会社と新たに雇用契約を結ぶこと(実質的には転職に近い)
配転は同じ会社の中での話だけど、出向や転籍は会社をまたぐ点が違う。特に転籍は元の会社を「辞める」ことになるから、本人の同意なしには基本的にできないよ。
会社はなぜ配転を命じることができるの? 法律的な根拠を知ろう
「自分が希望した仕事や場所と違うことをやらされるなんておかしくない?」って思う人もいるよね。でも日本の労働法と裁判所の考え方では、一定の条件のもとで会社が配転を命じることは認められているんだ。その根拠は大きく2つある。
① 雇用契約・就業規則の規定
多くの日本企業では、社員を採用するときに「正社員」として雇う。このとき、雇用契約書や就業規則に「業務の都合により、勤務地や職種を変更することがある」みたいな一文が入っているケースが多い。これが配転命令権の根拠になる。ゲームで例えると、最初にゲームを始めるときに「このゲームのルールに同意します」ってチェックを入れるよね。その「ゲームのルール」の中に「キャラクターの役割変更あり」って書いてあるイメージだよ。
② 日本の「メンバーシップ型雇用」という文化
日本の大企業では長らく「ジョブ型雇用」ではなく「メンバーシップ型雇用」という働き方が主流だった。ジョブ型とは「この仕事をするために雇う」という欧米スタイル。一方、メンバーシップ型は「まずうちの会社のメンバーとして雇う、仕事は会社が決める」というスタイルだ。メンバーシップ型では「会社のために必要な場所・仕事に就いてもらう」という考え方が根本にあるから、配転命令も認められやすいんだよ。
最高裁判所も「配転命令は原則有効」と言っている
1986年の東亜ペイント事件という有名な裁判で、最高裁判所は「就業規則に配転の規定があれば、業務上の必要性があるかぎり、配転命令は原則として有効」という判断を示した。これが今でも配転に関する裁判の基本的なルールになっているんだよ。
配転を断れるケースってあるの? 労働者が守られる3つのポイント
「原則として配転命令に従わなければならない」とはいっても、何でもかんでも従わなきゃいけないわけじゃない。裁判所は配転命令が「権利の濫用——つまり、持っている権利を不当なやり方で使うこと——にあたる場合は無効」と判断してきた。具体的には次の3つの観点から判断するよ。
① 業務上の必要性がない
配転に業務上の理由が全くない場合、命令は無効になりやすい。たとえば「特定の社員を嫌いだから遠い支社に飛ばした」「辞めさせたいから不便な場所に異動させた」みたいなケースがそれ。会社側が「人員の調整が必要だった」「その人のスキルが必要な部署があった」みたいな合理的な理由を示せないと、命令が無効になる可能性がある。
② 労働者の不利益が大きすぎる
配転によって社員が受ける不利益が「通常甘受すべき程度を超える」場合も無効になりうる。たとえば、こんな状況が考えられる。
- 要介護状態の親や子どもがいて、どうしても転居できない
- 配偶者も働いていて、引っ越しによって仕事を失うことになる
- 持病があって、転勤先の環境では治療が継続できない
こういった事情を会社が全く考慮しなかった場合、配転命令が無効と判断されることがある。ただし「引っ越しが面倒くさい」「今の街が好き」という理由だけでは不利益が大きすぎるとは認められないことが多いよ。
③ 不当な動機・目的がある
嫌がらせや制裁(罰)を目的にした配転は無効。たとえば「会社の不正を告発した社員を左遷した」「組合活動をしている社員を遠方に飛ばして活動できなくさせた」みたいなケースだよ。これは憲法や労働組合法でも保護されている権利に反するから、裁判で会社側が敗訴するケースも多い。
配転を命じられたらどうすればいい? 現実的な対処法
実際に配転を命じられたとき、どう動けばいいのかを整理しておこう。感情的に「絶対嫌だ!」と言うだけでは問題は解決しないし、逆に何も言わず泣き寝入りするのももったいないよ。
まずは「なぜこの配転なのか」を聞く
配転の理由を正直に聞くことは大事。「業務上どんな必要があるのか」「なぜ自分が選ばれたのか」を確認することで、不当な配転かどうかを判断する材料が集まる。多くの会社では、配転命令を出すときに事前面談をして理由を説明する義務を感じているし、説明できない場合はそれ自体が問題の証拠にもなるんだ。
断りたい事情がある場合は書面で申し出る
介護、健康、家族の状況など、配転命令に応じることが難しい具体的な事情がある場合は、口頭だけでなく書面で申し出るのが大切だよ。証拠として残るし、会社側にも「真剣に困っている」と伝わりやすい。
それでも解決しない場合は専門家に相談する
話し合いで解決しないとき、頼れる場所がいくつかある。
- 労働基準監督署:国が設置している労働問題の相談窓口(無料)
- 労働局のあっせん制度:会社との間に入って調整してくれる公的サービス
- 弁護士・社会保険労務士:法的なアドバイスをもらえる専門家
- 労働組合:会社の中に組合があれば、一緒に交渉してくれることもある
「配転→解雇」の流れには注意
もし配転を断った後に「では解雇します」と言われた場合、その解雇が正当かどうかは別の話。日本の労働法では、会社が社員を解雇するには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要とされていて、単に配転を断ったというだけでは不当解雇になる可能性が高い。「断ったら首にする」という脅しには安易に屈しないことが大切だよ。
最近の配転事情と「ジョブ型雇用」への変化
ここ数年、日本の働き方は大きく変わりつつある。特に「ジョブ型雇用」という概念が広まってきていて、これが配転のあり方にも影響を与えているんだ。
ジョブ型雇用が広まると配転は減る?
ジョブ型雇用では、「この仕事のために、この条件で雇う」という契約を最初から明確にする。つまり、雇用契約に「担当業務はシステム開発、勤務地は東京本社」と書いてあれば、会社は勝手にそれを変えることができなくなる。大手企業でもジョブ型への移行を進めているところが増えてきていて、そうなると今後は配転命令の範囲が自然と狭まっていくと考えられているよ。
地域限定社員・職種限定社員という選択肢
最近では最初から「転勤なし」「職種変更なし」という契約で働ける「地域限定正社員」「職種限定正社員」という雇用形態を導入する会社も増えてきた。この場合は契約に反する配転命令は出せないから、「転勤したくない人」にとっては安心して働きやすい選択肢になっている。ただし、給与や昇進の機会が通常の正社員より制限されるケースが多いので、メリットとデメリットを比べて選ぶ必要があるよ。
テレワーク普及と配転の関係
新型コロナウイルスをきっかけに広まったテレワーク(在宅勤務)も、配転問題に変化をもたらした。以前なら「大阪支社に行け」という命令は引っ越しを意味したけど、テレワークが普及した会社では「所属は大阪支社でも、仕事は今住んでいる場所でできる」という形が増えてきた。配転の「不利益の大きさ」を判断する基準も、これから少しずつ変わっていくかもしれないよ。
配転は必ずしも悪いことではない
ここまで「断れるか」「不当か」という話を中心にしてきたけど、配転にはポジティブな面もある。違う部署や職種を経験することでスキルの幅が広がるし、さまざまな仕事を知ることで自分が本当にやりたいことが見えてくることもある。実際に「配転で新しい仕事に就いたら、そっちの方が合っていた」という声もよく聞く。会社も人材育成の一環として戦略的に配転を使っているケースが多いので、命令を受けたときは「なぜ自分がここに動かされるのか」という視点で考えてみると、意外な発見があるかもしれないよ。
